「とーしちゃんｖ」

「………なんだ」

「今日は何日でしょー？」

「………2/14…」

「正解〜ｖじゃ、今日は何の日か知ってるかぇ？（にっこりｖ）」

伊庭のふんわりとした笑顔にはなぜかこっちもつられて笑ってしまうのだが。

「…………」

この質問にはもう飽きた。

「…………『ばれんたいん』とかいう日だろう」

うんざりしたように土方が答えると、伊庭の顔がぱぁっと明るくなった。

「歳ちゃん…！邪険に扱いながらもやっぱり心ではオイラのこと待っててくれたのｋ」

「違う（即答）。大・体・な・ん・で・コ・コ・に・お・前・が・普・通・に・い・る・ん・だ」

ココとは新撰組屯所副長室のことである。

「うーん、やっぱ愛？（にっこり）」

「帰れ（怒）」

[ St.Valentine's Day ]

「というわけで、歳ちゃんにオイラの想いを届けに来たんだよｖ」

「おぅ、そうかよ………」

土方はうんざりとした様子で相変わらず机に向かっている。　

「もーいけずだなぁ」

せっかくはるばる江戸から来たのに、こっち向いてくれたっていいじゃん…と不満げに呟く伊庭。

「いいかぇ？バレンタインってえのは、温め続けてきた淡い恋心を伝える１年に１回の絶好のチャンスなんだよ？」

「知ってる」

『温め続けた』など伊庭はそんなタイプじゃないが。←即行動即実行タイプ（対土方仕様）

「たった１年に１回の日なんだよ？こうやって2人で過ごしたいっての分かるだろ？」

「………伊庭…」

「うん？」

「毎年毎年その説明はいい＆7日おきに来るやつに『せっかく』とか『はるばる』とか言われたかねぇ！（机バンバン）大体こーゆーチョコレートを女が男にプレゼントするっつーのは（バンバン）日本だけでしかもこれは日本の菓子会社の策略と言う商売根性丸出しな何とも世知辛い理由からだと毎年説明してるだろうが！って寝るなそして聞け（副長チョップ←弱そう）」

「（白羽取り）だって歳ちゃん説明長いさ〜（欠伸）」

「それになぁ、言いたかないが『くりすます』の時も全く同じこと言ってたぞ、しかもやっぱ毎年。」

「聖夜の熱い夜は恋人たちには外せないねぇ」

「ホワイトデーも正月もひな祭りも七夕も言ってたぞ、むしろ年中行事ことあるごとに（怒）」

「あれぇ？そうだったっけ？（すっとぼける）」

「顔見に来てくれんのは嬉しいがな！？（机バンバン）ことあるごとに来るんじゃねぇよ！こう見えても俺は忙しいんだ！それに念友と思われちまったら隊士に示しがつかねぇ！帰れ！！（怒）」

「そうさｖ念友じゃなくて恋人さねｖ」

「ふざけるな（怒）」

「（しゅーん）今夜は高級ほてるで『でぃなー』の予約取ってたのに……」

「………。つーか時代考証無視しすぎだろ…（疲労）」

「オイラの愛は時間だって超えるのさ歳ちゃん……（キラキラ）」

「……。……。お前公用で来てんだろうが。もういい加減帰れよ…」

「もー分かったよぅ、じゃあさ、せっかく特別に作ってもらったんだ、
せめてチョコレート１粒だけでも食べておくれよ？」

「…」

「コニャック（ブランデーだっけ？）がちょっと入ってて、歳ちゃんみたいなオトナにぴったり似合うチョコレートなんだってさｖ」

「………一つだけだぞ…」

「じゃあ口移しでｖ」

「はい戴きます（手でぱくっ）」

「………………………つまんねぇの…（ぶーぶー）」

チョコレートの甘さと洋酒の匂いがきつく、土方はつい茶を手にする。

「つまんねぇも何もあるかよ、大体事あるごとに遊びに来やが………（グラッ）…！？」

「ふふふー、効いてきたねぇ、さすが即効性があるなァｖ」

「……は！？即効性！？てめぇ何入れやがった！！」

「だからお酒だってば。まったく、相変わらずお酒に弱いねぇ」

「嘘だ！ぜってー別のモン混ぜやがったろ！酒はソレを誤魔化すためか！」

「おー、歳ちゃん頭は冴えてるねぇ。でも身体の方は全然冴えてないみたいだねぇ」

上手いことを言いつつ あの笑顔で押し倒す伊庭。

「ふ、ふざけるな！！」

焦る土方。

「ふざけてないよ、オイラはいつも本気さ」

その言葉の通り、目が笑っていなかった。

「（こ、怖ぇ〜〜〜！！）」

改めて江戸四大道場の一つ・伊庭道場の御曹司『伊庭の小天狗』の実力を思い出した土方だった。

貞操の危機を感じまくりの土方は泣きそうになっている。

「ふふふ歳ちゃん、ドーンとオイラに任せときなって♪悪いようにはしないからサ☆」

「馬鹿野郎！（号泣）『悪いようにしない』っつった時は時代劇じゃ9割9分間違いなく『悪いようにされる』って相場が決まってんだよ！」

「ほー、歳ちゃんは物知りだねぇ。」

「そういう問題じゃねぇ（怒）（絞首）」

「ははは、歳ちゃん苦しいよー。つーかオイラはそいつらとは違うさ〜。オイラはその9割9分の方さね」

「………（考）………つまり違わねぇんじゃねぇかよ！！（号泣）」

「はーい歳ちゃんリラーックスｖ」

「リラックスとか使うな！ってギャー！！」

その時廊下では…

沖田＠通りすがり　「あーまたやってますねぇ、土方さんも相変わらずだなぁ」

今日も副長室は騒がしい。

[終わっとく]